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2016-05

ユニバース - 2016.05.27 Fri







あっという間に半月が過ぎてしまう・・・。
何事もなかったかのように、日常は繰り返されていく。

朝起きて、ごはんを食べる。
洗濯を干して、アロアとボールで遊ぶ・・・
ご近所の人と他愛のない会話をして、笑ったりした。

カブのいた当たり前の私の世界は、
カブのいない当たり前の世界へと塗り替えられていく。

よく似てるけど違う世界、私の世界によく似たダミーの世界。



カブが恋しい・・・。









あの日はなんでもない日だった。
午後になってから、何かを喉につまらせたようなむせりが始まった。
私はてっきり、お昼ごはんを誤嚥したのだと思った。

次第に発作のように繰り返され、止まらなくなり病院へ向かっった。

日曜日の夕方。
上りの高速は、行楽帰り車で大渋滞だった。
後部座席で妹がカブを抱いていた。
むせ返る呼吸と、体をのけぞらせて咳き込む声が続いている。

デジャブのような感覚。
9年前のの深夜、同じようにカブを連れて病院へ向かっていた・・・。

・・・なぜ気付かなかったのだろう。



赤いブレーキランプが川のように続いている。

「お姉さん、どうしよう・・・カブくん・・・・カブくん!!」 
妹の切迫した声が車内をこだまする。




ダメだと思った。

このまま渋滞の列に並んでいたら、間に合わない。
腕に抱いてあげることが出来無いままになる・・・。

呼吸もままならない状況の中、カブは2回大きな声でないた。

「降りるよ!! 道で看取る」 そう決めて、近くのインターでおりた。

「病院なんか行きたくない!!」

カブがそう言ったから・・・。



一般道に降りて左手でカブを抱いた。
その瞬間、嘘みたいに穏やかな寝息を立てて眠ったのだ。
安心たかのように眠ってしまったのだ。


私は右手だけで運転した。

「そうか、ごめん。」
「カブくん、おうちに帰ろう・・・」






家に着くまでは、すやすやと眠っていたけど
帰ってからは断続的な呼吸発作があった。

さっきカブの気持ちを受け取ったのに、なぜまた病院に向かってしまったのだろう・・・。

夜になれば渋滞は解消される。
弟が来てくれて、運転をしてくれると言った。
それなら、私が抱いて病院まで行けると思った・・・。

何か出来れば、呼吸だけでも少し楽にすることができたら・・・。

いや、もしかしたら苦しむ姿を見ていたくないという
私の弱さがあったのかもしれないと今では思う。

pm9:00 再び車を走らせた。
後部座席でカブを抱いていた・・・。
一度も起きることなく、すやすやと眠っていた。
苦しい呼吸でなく、本当にすやすやと・・・。

全身の体重を完全に私に委ねた重みを感じながら、
こんな状況なのに、私は幸せに包まれて微笑んでいた。

・・・・あれは何だったのか・・・。








病院につくとすぐさま酸素室へカブは入れられた。
チアノーゼが出ていたから。

一通りの検査が終わりレントゲンを見た。



「肺水腫・・。」


先生の説明よりも前につぶやいた。
9年前、何度も繰り返しみたカブの心臓のレントゲン。

真っ白に写る肺は、あの時と同じものだった。




こんな皮肉もあるのだ。
肝臓に急成長する大きなガンがあり、
腎臓も肝臓も、痙攣を起こす脳にも注意をしてきたのに、
血液検査では、直接的にに心臓に影響が出るほど各数値は悪くなかった。


・・・つまり心臓の限界が来たということだった。


心臓特有の咳はなかったから、おそらく急性。
でも、心肥大を起こしていたから少し前から、
本来なら食べることも、歩くことも出来なかったはずだった。





肺水腫の苦しみは知っている。
私よりカブが一番良く知っている。

利尿剤で肺の水を抜いたとしても一時的。
繰り返し貯まるだろう。
利尿剤を使えば、肝臓や腎臓が厳しいのだろう。
毎日の輸液も、こうなっては出来ないかもしれない。
そうなれば、腎臓も悪化する。
ただ長引かせるだけになってしまうのだろう・・・。

頭のなかでいろんな考えがグルグル回る・・・。




「今後、どんな危険な状況になっても、私はカブを入院させるつもりはありません。」
2.3ヶ月前、担当医に宣言したカブとの約束。





「連れて帰ろう」  

・・・そう思っていた。
そう思っていたけど、気持ちは簡単にもう一方へも傾く。


自分で決めることができなくなっていた。
怖かった・・・。


パパが会社から病院へ着いた。
夜勤の医師は、危険な状況ではあるけれど、酸素室なら外より呼吸は楽です。
一晩、利尿剤を流し、肺の水が抜き、明日、自宅に酸素室を設置してお迎えに来てはどうか・・・。


・・・という提案をした。



どうしようもなく連れて帰りたかった。
今、目の前の酸素ケージのレバーを開けて抱いてあげたかった。
目も耳も塞いで、ただカブを抱いて逃げ出したかった・・・。







「明日、家に酸素室を設置して迎えに来ます」


振り向かなかった。
振り向いてしまったら、連れて返ってしまうと思ったから。


カブを最後に見た時、酸素室のケージの中でヨロヨロと立ち上がっていた。
自力で立ち上がることなど出来なかったのに。
満身の力で、立ち上がり、ガラスのドアにへばりつくように私をみていた。


カブは私に何かを言っていた。
その時、その声を確かに聞き取ったのに・・・・。









これでいいのだ。
もしかしたら9年前のあの時みたいに、
迎えに行ったらすっかり元気になっているかもしれない。

大丈夫。カブは何度もそんな風だったもの。

朝を待とう。
明日早く起きて、早く酸素室を設置しなきゃならないから、ちゃんと寝よう。
1秒でも早く迎えに行ってあげよう。
カブは、きっと大丈夫。

そんな考えが頭のなかを占めていく。
なんの根拠もない安心感に、私は眠った・・・。




午前3時、枕元の携帯が鳴った・・・。




薄っすらと夜が明けていく。

朝なのか、夜なのか・・・。
まだ温もりの残るカブを抱きながら、
どこからどこに行こうとしているのかもわからなかった。


私が振り向かずに出て行った時、
私のことを酸素室の中からずっと見ていた・・・パパが言った。


そう言えば、カブは何か言っていたのだけど、なんて言ってたのだっけ・・・。










17年と5ヶ月。
納得なんて言葉は使いたくないけど、
「ありがとう」 そう言って見送れる年齢なのだと思う。

チャーシューの時のように。
マーくんの時のように。

背中を押して見送るはずだった。


別れの辛さや、悲しみはどの子も同じななのに
苦しくて苦しくて仕方がない。

みぞおちの奥深くからザワザワしたアメーバーのような物が湧き上がって、
胃や、気管や喉に上がってくる。

脳みそは、腫れ上がっているように重く痛い。




シニアになった頃から、その生命の長さと引き替えにしても
「別れ方」にこだわってきた。

だから、この数ヶ月、痙攣を起こして辛い日は、カブを抱いて言っていた。

「もう頑張らなくていいよ。ママはいつでもいいよ。
カブくんが決めていいんだよ。ママは今でも大丈夫だよ。」・・・・と。



望んだ別れができなかった事が、こんなにも辛いのことだと思わなかった。
でも、もう仕方ないのだ。


カブが決めたのだから、いいのだ。
最後にせめて少しでも、酸素室の中で楽だったのだからいいのだ。
もしかしたら、カブは辛い姿を私に見せたくなかったからそうしたのかもしれない。

みんなもそう言ってくれた。
だからそう思えばいいし、きっとそうなのだ。


念仏のように何度も繰り返し、反芻した。



だけどザワザワは消えなかった。
荼毘に付して小さくなったカブが家に帰ってきても。


朝、目が覚めた瞬間に
目の前に酸素ゲージの中から私を見るカブがフラッシュバックする。

それは、窓越しに。テレビの画面に。
誰かと会話している時に、日差しの隙間に。





とうとう私は過呼吸を起こした。



ペロママが心配して、安定剤をもらいに病院へ連れて行ってくれた。
ザワザワしたら薬を飲んだ。


私はどうしてしまったんだろう・・・・。









初七日を過ぎた頃、アロアと公園に散歩に行った。
夕方の公園には、強い西陽が射していて、草をはむアロアをぼんやりと見ていた。

眩しくてアロアが時々視界から消えるから、手のひらでまぶたを覆ったその時、
またあのフラッシュバックが起きた。


ザワザワが起こる・・・そう思った瞬間、
フラッシュバックと一緒に声が聞こえた。






そうだ。 あの時私はカブの声を聞き取ったのだ。
どうして忘れていたんだろう。

カブは酸素ケージの中で、力を振り絞って立ち上がり、
私にこう言ったのだ。






「オイラ、どんなに辛くても、苦しくても構わないから一緒に帰りたい」


そう言ったのだ。
私に確かにそう言ったのに。


涙があふれた。
公園で人目も気にせず、うずくまって泣いた。
大きな声をあげて泣いた。


アロアが私の腕をペロッと舐めた。
心配そうに私を見上げていた。






その日からザワザワは消えた。


17年の歳月をかけて私とカブが育んできたもの。
生涯をかけてカブが最も望んでいたこと。

同じ言葉を持たない私達が、五感以外の何かで気持ちを伝え合う事。
カブは自分の気持は、100%私に伝えることが出来ると信じていた。

だから、たくさんしゃべっていた。
伝わるまでしゃべっていた。

それなのに私は、あの時の声を聞かぬ事にした。
そして、都合のいいように解釈をした。
辛くないように解釈した。

違う、違う、ちゃんと聞いている。
ママはちゃんと聞いたよ。だからカブに謝らなきゃいけない・・・・。


病院に置いていった事ではなく、カブが重要視しているのは、
自分の意志が、私にちゃんと伝わっているかなのだ。
それを捻じ曲げている私に、ちゃんと聞いたよね?って言っているのだ。


カブくんごめん。
あんなに帰りたいと言ったのに、ママは置いていってごめん。
本当にゴメンね・・・。

でも、ちゃんとカブの気持ちは伝わっていたよ・・・。


カブは許してくれていると思う。
許すも許さないも、もうそんな事気にしてない気さえする。




荼毘に付した翌朝、初めて不思議な体験をした。

朝からフラッシュバックで泣いていた。
ばぁばは、庭で草むしりをしていたら、「ピンポーン」とチャイムが鳴った。
私は、宅急便だと思ったから、ばぁばに任せて出なかった。

少しして、テラスに出て、「宅急便きたの?」と聞いたら
ばぁばが、「あれうちじゃないよ。誰も来てない」と言う。

うちは、近所はおろか隣の家のチャイムさえ聞こえたことがない。
へんだなー。と思いながらテラスに立っていた。
バァバは相変わらず草をむしっている。

再び「ピンポーン」となった。
私は、門の方を見ていた。バァバは振り向いて門の方を見た。
・・・が、誰もいない・・・・。

塀の影に子供でもいるのかと、私はサンダルを履いて門の前に来た。
バァバも、門の前に。

・・・が誰もいなかった。

二人で顔を見合わせた。

その瞬間もう一度、「ピンポーン」
ドアチャイムは二人の目の前だ。

とっさにバァバが、「門開けて!! 門!! カブだよ!!」と叫んだ。
私は門を半分開けた。

その時無意識に、地面を見たような気がする。



パパが二階から
さっきから「ピンポン、ピンポン誰かきたのー?」と降りてきた。



それ以前も、それ以降もチャイムがおかしいということは一切ない。
その時はピンとこなかった。
だけど今なら解る。


不思議体験など、大切なものを亡くした直後の思い込みと思われるかもしれないけど、
でも、あれはカブであったのだとはっきりと解る。


もう、カブはチャイムなど鳴らさなくても、
門など開けなくても入ってこられるはずだ。
なのに、チャイムを鳴らし、3度も鳴らしカブだと解らせて門を開けさせた。


「ただいま~~!!」
「オイラを病院に置いてきた、置いてきたってママが泣くからさー。
オイラ帰ってきてるからなー♪」と言ったのだ。
そう思っている。


カブくんなら、家中のお皿が飛ぶ事になってもちっとも怖くないよ・・・。




カブの最後に来ていた服、アゴのせ枕、ブランケット。
それらにはカブくんの匂いが残っている。
毎晩顔を埋めては、やっぱり涙が出てしまう。


でも、少しだけ頑張って元気になろう。
どんなに辛いことも受け止めて。
どんなに苦しいことも跳ね除けて強く生きることを教えてくれたカブ。


今、あの子に私がしてあげられるたったひとつは、
私に囚われることなく自由になること。

カブを自由にしてあげなきゃならない。

だから、少し頑張るね。


カブとは正反対の、自分の意志を伝えるのが苦手なポロンの残りの時間を大切に過ごすこと。
アロアの今の輝きを、心に焼き付けること。

それが今私がしなければいけない、私ができること。








もう、この世界ではカブのような子には出会えないだろうけど。
私とカブの世界は終わらない。

唯一無二の私のカブの世界は、ずっと続いて行くのだと信じてる。



永遠に続いていくのだと信じている。






もう泣かないもん。




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愛でいっぱい - 2016.05.19 Thu




お葬式は無事に終わりました。


おしゃれが好きだったかぶくんには、夏と冬のロンパースと帽子。
ペロママが作ってくれたお弁当とお友達に配るおやつ。

パパとバァバと妹ちゃんの履いていたくつ下。
私が来ていたTシャツで包んであげました。

大荷物で出かけて行きました(笑)










2016051901.jpg








それから、妹達の・・・







2016051902.jpg










これなら淋しくないでしょう?








カブくんにたくさんのコメントをありがとうございました。
我が家の小さなヒーローは、スーパーヒーローになったみたいで
きっと本当に喜んでいます。
皆さんのコメントはすべて印刷してカブのそばに置きますね。








そして、たくさんのお花と贈り物に囲まれました。









2016051903.jpg










皆さんの声や、このお花たちをみていたら、胸が一杯になります。
カブを幸せな気持ちにさせてくださって本当にありがとうございました。


いつものお友達も、ひっそりと見守っていたお友達も、近くのお友達も、
遠く離れたお会いしたことさえ無いお友達も、
私の手をとって、私の肩を抱いて一緒に泣いてくださっているように感じました。





バカな私は、唯一切望した別れができなかったけれど、
嘘つきの私は、カブとの最後の約束さえ守れなかったのだけど、
それが今でも、ただ苦しく辛いけれど
愛に囲まれたカブは今とても幸せ。





お礼を申し上げることも出来ずに、本当にごめんなさい。
もう少しだけ、時間を頂けたらと思います。



駆けつけてくれたYumiちゃん、毎日私が心配で来てくれるペロママ
本当にありがとう。



言葉に言い尽くせない感謝でいっぱいです。










庭のバラが満開です。






2016051904.jpg






毎年バラが咲くと枝の下から鼻をくんくんと上に向けて、
それから、テラスにいる私に振り向いていたカブくん。


「ママ、バラが咲いたよ」・・・って。



カブの声が、どこからかそんな風に聞こえた気がした。



「そうだね。今年もとてもきれいだね・・・」










穏やかな日々 - 2016.05.16 Mon









2016051601.jpg










・・・とカブくんが言ってたから、
みんな心配していただいているのだろうけど、経過は書かないできました・・・。




通っていたホリスティック治療のおかげなのか、
はたまたカブくんのポテンシャルの高さなのかは、わからないけど、
食欲も旺盛なまま、快調・快便、元気なまま日々を過ごしていました。

特別なことはなにもないけど、普段通り。
いつものように。






ただ、何度かの痙攣発作で、目がみえなくなり、足が立てなくもなるも
その度、もう歩けないな・・・。
もう見えないな・・・。

なんて思っても、カブくんは自力でこの歳で、それは必死の根性で、
私の介助を拒否してまで、戻してきました・・・。








・・・この一ヶ月、痙攣もなく穏やかに過ごしました。







2016051602.jpg








少し暖かくなって、のんびりと過ごしました。








2016051603.jpg










こんな日が永遠につづくと思うような日々でした・・・。











今日、午前3時 カブくんが旅立ちました。


最後は、ガンでもなく、肝臓でも腎臓でも痙攣でもなく
心臓でした。


ガンの症状など一つもありませんでした。
ガンにも負けない本当につよい子でした。





わんこは神さまからの預かりもので、
死んだら神さまに返すのだという話があります。


もしそうなのだとしても、私は神さまからの預りものだなんて信じません。
そうなのだとしても、かぶくんの魂は返しません。




カブくんは17年前、私の手のひらから生まれた私の子なのだから。





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わが身のことのようにカブくんを心配して頂いて本当にありがとうございました。
辛い時も、今も、いつも心強く思います。



あした家族で荼毘にふします。



もし、コメントを頂けるのなら、私にではなくカブくんに書いてあげてください。
みんなの注目を浴びるのが大好きな子でした。
きっと得意になって喜ぶと思います。





ありがとうございました!!






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ありがとうございます

プロフィール

camp-k

Author:camp-k
☆チャーシュー(享年17歳6ヶ月)
カブとポロンの母。h19/2虹の橋へ。私の分身。

☆マーク(享年17歳9ヶ月)
のんきなマイペース。2ワンの父としての威厳はゼロ。
2014年9月15日虹の橋へ。
世界一やさしい子

☆カブ(享年17歳5ヶ月)
H.20/12増帽弁閉鎖不全で余命3日と宣告。9時間に及ぶ人工心肺を使った狭窄形成手術に挑み、生還。 好奇心旺盛な知能犯。
2016年5月16日虹の橋へ。

☆ポロン(享年16歳10ヶ月)
2016年6月20日虹の橋へ。
我が家のお姫様。
生涯天然のぼんやりキャラ。


☆アロア(5歳)
3ワンシニアーズの教えをすべて背負って新世界へ!!            

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